災害時の備えにポータブル電源は必要?非常用電源の役立つ場面や選び方

災害時の備えにポータブル電源は必要?非常用電源の役立つ場面や選び方
地震や台風などの大規模災害が起きたとき、私たちの暮らしに深刻な影響を与えるのが「ライフラインの停止」です。
災害時のライフライン停止によって特に困るものの代表として挙げられるのが、電気、水道とトイレです。
近年、防災意識の高まりとともに「ポータブル電源(非常用電源)」を備える家庭が増えてきました。とくに在宅避難を前提とする人や小さなお子様がいる家庭では、停電中でもある程度の電力を確保できるポータブル電源は大きな安心材料となります。
この記事では、「ポータブル電源は本当に必要なのか?」という疑問に答えながら、災害時の活用シーン、注意点、選び方のポイントまで解説します。
ポータブル電源とは
ポータブル電源とは、充電して繰り返し使える大容量のバッテリーです。スマートフォンのモバイルバッテリーを大型化したものと考えるとイメージしやすいでしょう。
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コンセントや車のシガーソケットから充電できる
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AC(家庭用コンセント)やUSB、DC端子を備え、さまざまな家電が使用可能
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ソーラーパネルによる充電が可能なモデルも
製品によって容量や出力が異なり、小型のものはスマートフォンやライト程度にしか使えませんが、大容量モデルであれば炊飯器や電子レンジなどの家庭用家電も一部使用可能です。
災害時におけるポータブル電源の必要性は
災害時にすべてのライフラインが同時に停止することは珍しくありません。ただし、過去の震災事例から見ると、電力の復旧は比較的早い傾向があります(断水やガス停止の方が長期化しやすい)。
また、ポータブル電源は重量があり、基本的には車で避難する場合でなければ持ち運べないと考えてよいでしょう。
以上のことからもポータブル電源は災害時に必ずしも必要なアイテムとは言えないかもしれません。
ただし、自宅が無事で在宅避難が可能なケースでは、照明や通信、生活家電の一部が使えることは大きな安心感につながります。特に以下のような方には強くおすすめできます:
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小さな子どもや高齢者と同居している家庭
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介護・医療機器(吸引機やCPAPなど)を必要とする人がいる
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長期の停電リスクが高い地域(山間部、島しょ部)
災害時におけるポータブル電源の活用シーン
スマートフォンやラジオなどの通信機器の充電
停電時にもっとも重要になるのが情報収集と連絡手段の確保です。スマホや携帯ラジオの充電を繰り返し行えることは、非常に大きなメリットです。
照明器具の使用
懐中電灯ではカバーできない室内照明や夜間トイレ用のライトなど、小型のLEDランタンなどに電力供給できます。
扇風機や電気毛布の使用
夏の熱中症、冬の低体温症を防ぐためには気温対策のための電力供給が重要です。消費電力の少ないUSB扇風機や電気毛布であれば比較的長時間の利用が可能です。
調理家電や電子レンジの使用
モデルによっては炊飯器や電気ポット、電子レンジなどの調理家電を短時間稼働させることができます。ただし、一気に電力を消費するため連続使用には不向きです。
長時間使用するものには不向き
冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの消費電力が高く、稼働時間が長い機器には適していません。あくまで**“緊急時に短時間使用する”目的で選ぶ**ことが大切です。
ポータブル電源の選び方
ポータブル電源を選ぶ際は、**「誰が、何に、どれくらい使いたいか」**を明確にした上で、容量・出力・充電方式を見ていく必要があります。
何人で使うか
利用人数が増えれば必要な容量・出力も増えます。
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1〜2人:1000〜1500W出力でも十分
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3人以上:3000W以上の出力があるモデルが望ましい
ポータブル電源を何に使用したいか
スマホやライト中心なら小容量モデルでもOKですが、調理家電や医療機器を使う場合は消費電力の把握が不可欠です。
ポータブル電源の容量(Wh)
「Wh」はバッテリーのエネルギー総量を示します。
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500Wh〜:スマホ・ライト中心の使用向け
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1000Wh〜:スマホ+調理機器を短時間使いたい方向け
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1500Wh〜:家族複数人で使用、医療機器など必要な場合
例:1000Wh → 1000Wの家電を1時間動かせる(理論上)。実際には電力変換時にロスが出るため、目安と考える。
ポータブル電源の出力(W)
出力によって「使える家電」が決まります。2つの指標に注目しましょう。
定格出力
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安定して出力し続けられる最大値
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たとえば定格出力1500Wなら、1500Wまでの家電を安全に使用可能
瞬間最大出力
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家電の起動時に一時的に必要となる出力
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炊飯器や電子レンジは起動時に定格以上の電力を消費することがあるため、瞬間最大出力が大きいモデルが望ましい
ソーラーパネル付きであれば安心感がある
長期停電時の再充電手段として、ソーラーパネル付きのポータブル電源があれば心強い存在になります。
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太陽光さえあれば外部電源がなくても再充電可能
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発電効率は天候に左右されるが、連日停電が続く状況では非常に有効
よく使う家電・電子機器の消費電力一覧(目安)
家電・電子機器 | 消費電力の目安 | 使用時間の目安 | 備考 |
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スマートフォン充電 | 約5~10W | 約2時間 | モバイルバッテリーでも対応可 |
LEDランタン(小型) | 約3~10W | 約8~12時間 | 長時間使用可能 |
モバイルWi-Fiルーター | 約5~10W | 約8時間 | 通信確保に有効 |
携帯ラジオ(乾電池式) | 約1~3W | 約20~30時間 | 消費電力は非常に少ない |
ノートパソコン(省電力) | 約30~60W | 約2~4時間 | ACアダプタ使用時の数値 |
扇風機(小型) | 約20~50W | 約2~6時間 | 夏季の熱中症対策に重要 |
電気毛布(中温設定) | 約40~80W | 約4~6時間 | 冬季に重宝される暖房代替 |
炊飯器(3合炊き) | 約300~500W | 約30~45分 | 瞬間最大出力が必要になる機器 |
電気ポット | 約700~1200W | 約5分 | 一度の沸騰で100~200Wh消費 |
電子レンジ(600W) | 約1000~1300W | 約5~10分 | 高出力機器。使用頻度は要注意 |
冷蔵庫(中型) | 約150~300W | 常時稼働 | 停電時の稼働は難しい(要大型バッテリー) |
洗濯機(縦型) | 約300~500W | 約40分 | 実用的には災害時には使用困難 |
テレビ(32~40型) | 約100~150W | 任意 | 災害時はスマホ・ラジオ優先 |
ドライヤー(強風) | 約1000~1200W | 数分 | 高出力・非推奨 |
CPAP(睡眠時無呼吸装置) | 約20~40W | 約8時間 | 医療機器。連続稼働に注意 |
まとめ
ポータブル電源は、災害時に必ずしも「必要不可欠」ではないものの、「あれば非常に心強い」非常用電源です。
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在宅避難の可能性があるなら備えておきたい
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小型でもスマホやライトの充電には十分役立つ
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用途・家族構成・想定する使用家電に応じて容量・出力を選ぶ
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ソーラーパネルの併用で長期の停電にも対応可能
「自分や家族の暮らしにとって、何が止まったら困るか?」を考え、その答えに合ったポータブル電源を選ぶことが、災害への確かな備えにつながります。